FINAL FANTASY STORY


第4話−2
魔法都市フォン
Sorcery city Foun

「――以上です」
 王立魔法学院の、最も権力が集中している執行部。その執行部のメンバーが集まっている一室で、アスカは任務の報告を終えた。
「メドック・オーウェン評議長が死亡ですか。今後の選挙の行方が気になりますな」
 並ばれた椅子に座る、いずれも偉大な魔道師達が、報告を聞いて次々に懸念を表している。
「さよう、ラーダの戦線の問題もあり、時期評議長を早急に選ばねばならぬ」
「だが、まずは多くの評議員が犠牲になったために、大型選挙の実施が行われることだろう」
「するとラーダ問題が一時とは云え棚上げとなる格好に?」
「いや、それはカルナスの国防にかかわること。軍は前議長の方針通り戦線を展開していくのではなかろうか」
「しかし、現在の状況で軍の指揮は誰が……」
「アスカ・シュナイダー上級魔道師。アルカディア・フォルン将軍は行方知れずだそうだな?」
「はい。今現在、生存とも死亡とも確認が取れていない状況です」
 直立不動のまま、アスカが答える。
「魔法剣士団のユリア・ハーツ准将では器が足りるとは云いがたい。ネリクス・スタレーン将軍は申し分なかったが、死亡している」
「やはりアルカディア・フォルン将軍の損失は避けたい。彼の損失は、カルナスにも、我等魔法学院にも非常な痛手となろう」
「将軍の捜索を早めに行うことだ。クラジミールに落ち延びた議員もいる以上、フォン市内だけでは済まぬ」
「それでは軍は動けませんぞ。今は残留部隊によるフォン市内の防衛だけで手一杯なはず」
「昨日から予備役召集がかかっているが、人数の確保に時間がかかろう」
「捜索に魔道師同盟を使われてはどうかな。同盟なら各地にある。伝達すればすぐに動き出そう」
「そうですな。可能性のある地区に伝達を」
「カルナス城内の再捜索も行った方がいいでしょう。損傷の激しい死体が多いと聞く。鑑定に長けた者を派遣させる必要もあるのではないかと」
「ではそうするとしよう。アスカ上級魔道師、ご苦労だった。退室を許可する」
「は……」
 憂鬱な室内からやっと出れる、と足を動かすが、アスカは振り返った。
「どうした?」
「……カルナス城内での事ですが」
「なんだ」
「アルカディア将軍の魔法によるものと思われる痕跡がありましたが、その威力についてです」
 ふと、その言葉を聞いて、執行部の魔道師達が目配せをしたように思えた。
「一点への高威力の魔法や、範囲魔法など、どれも私の知っている魔道師達と大きく能力の差が開いた魔法です。才能と訓練だけで、あのような魔法を扱うことが出来るのでしょうか」
 アスカの質問に、何人かの魔道師が目をそらす。
「目の前に証拠がある以上、可能という事だ」
「しかし――」
 なおも言い募るアスカに対して、一人の老魔道師が云いきった。
「残念だが、その事について君が知る資格が無い」
「……失礼しました」
「必要なことはそれだけか。なら退室するが良い」
「はい……」

 執行部を後にし、彼の所属している教室に戻ると、サリナ達がすぐに駆け寄ってきた。
「どうだった?」
「ま、可も無く不可も無く……、かな」
 問い掛けるサリナの顔は心配そうだが、アスカは優しく笑って返す。
 とりあえず彼は手近な席に落ち着くと、周りを取り囲む級友達を見やる。
「結局、上は選挙とか権威とかで頭が一杯みたいだね。まあ、予想はしていたけど」
「そう……」
「次の命令とか、あったのか?」
 クラインが割って入る。
「いや、僕にはそんな話は無かった。これ以降はスカウト生がやるんじゃないかな」
「スカウト生ね……」
 王立魔法学院内での言葉だが、学院への入学方法に、世界中からの志望者を集めたテストによって入学する方法と、学院が独自に有望な素質を持つ者をスカウトして入学させる方法がある。
 学院の生徒の大半は前述の、留学生と俗に云われる生徒達だが、後述のスカウト生達は、数が少ないものの、その能力は非常に優れている。世界に名を残している著名な魔道師は、半数以上が学院のスカウト生であるくらいだ。
「そうは云っても、あんな魔物の相手、僕等じゃ手一杯なのは事実だろう」
「まあ、そりゃそうだけど」
「じゃあ、あたし達のこれからの仕事はなしってわけ?」
「ま、しばらくそういうことになるんじゃないかな」
 シリアの云う事に、アスカは軽く頷いた。


 実際、王立魔法学院という、世界最高峰たる魔道師達の学校でも、中に入ってしまえば普通の学校でしかない。
 一教室あたりの人数が少ないため、あまり広いわけではない教室。板張りの床。落書きの絶えない黒板。染着いた壁や天井。
 よくある学校と特別変わる所が無い。基本的に全寮制で、フォン市の郊外に位置する事もあり、大抵は寮か教室にいるのが生活の全てであるためか、妙に生活臭の漂うあたり、違うところか。
 結局、外部では天才と云われているものの、学生であることには変わりが無い訳である。
 アスカはそんなことを思いながら、ぼーっと窓際の席で、遠く早朝の靄に包まれた街を眺めていた。
 あの日から早3日。
 ラーダ方面での事もあり、戦時中ではあるが、次の評議会議長と欠員議員の選挙も告示され、カルナス城は復興の工事が始まっている。
 学内も、スカウト生で構成される教室でいろいろと動きがあるようだが、アスカ達の教室は普段通りの生活に戻っている。
「あ、アスカ」
 クラインが教室の扉から顔を覗かせる。
「ん、クライン、おはよう」
「おう。まだ誰もいないのかよ。先生は?」
「なんか出張だってさ。よって今日は授業無し」
 15歳を越えた生徒達の教室は、専門的な事を学ぶのがほとんであるためか、授業はあまり多くない。基本的に魔道師として大陸魔道師同盟から認可されている事もあって、先日のカルナス城査察のように仕事を要求されたり、教師も魔道師の仕事に出張、生徒は校外研修も加わって、さらに授業数は減っていく。
「あ、そうなの? じゃあもう一眠り……」
「さっき、スタンレイ教室のスフレが来て」
「なになになになに!?」
 教室を去ろうとしていたクラインがものすごい勢いで戻って来る。その勢いに圧倒されつつも、
「スタンレイ教室も授業ないんで、2人で一緒に街に降りない? って伝えて欲しいだとさ」
「わあお、行く行く!」
 スフレからのデートの誘いに、大きく跳ね回って喜ぶクラインの姿に苦笑する。
「はいはい。いいから寝癖直してから行けよ」
「おうよ!」
 ガッツポーズで気合を入れ、はしゃぎながらクラインが駆け去っていく。入れ違いに、サリナとレイニーが入ってきた。クラインの去った方を向きながら、アスカに聞いて来る。
「どうしたの?」
「クライン、デートらしいよ」
「そうなんだ」
「クリス先生は?」
 続いてレイニーが聞いて来る。彼女もアスカ達の所属するクリス・レミントン教室の同級生だ。
「ああ、出張みたい。今日は1日休み」
「だからデートって訳ね」
 サリナが納得したように頷いた。
「そうそう。まあ、まだ靄も出てるけど、今日はすぐに晴れるでしょ」
「そうね。あ、じゃあ、アスカ、私達も2人で街に行かない?」
「ん、いいよ。相変わらずお金無いから、贅沢はダメだけどね」
「うんうん、分かってるって」
 サリナが嬉しそうに笑う。
「じゃああたしはどうしようかなー」
 交際相手のいないレイニーがぼやく。
「レイニー、この間振っちゃったじゃん」
「うん、まあ……。シリア探してあたし達も街に出ようかな?」


 コンコン、と部屋の扉を叩く音がする。
「ア〜スカ、入って良い?」
 部屋の外からはサリナの声。ここは学院生達の男子寮の一室だ。
「ん、良いよ」
 学院の制服とも云えるローブ――アスカの場合は上級魔道師の、黒のローブだが――を脱ぎ、あまり多くは持っていない私服に着替えたアスカが室内から答える。
 扉の金具の軋む音と共に、やはり私服に着替えたサリナが入って来る。
「ああ、やっぱり一人部屋って良いなあ」
「まーた云ってる」
 サリナのいつもの言葉に、笑って返す。確かに狭い学院の寮。個室は教師か、上級魔道師に優遇される。教師は大抵、市内に自宅を持ってはいるが。当のサリナは、同教室のシリア、レイニー他の女子寮4人部屋である。
「あ、そうそう。先生、出張長いみたいだよ」
 アスカが思い出したように云う。
「え? どのくらい?」
「クラジミールまでらしいから、最低6日は空けるって。クラインが喜びそうだなー」
「あら、そうなんだ。じゃあ久し振りにゆっくり休めそうね」
「そうだね。ああ、3ヶ月休みなしだったんだなあ」
 彼の言葉に、サリナがくすくすと笑う。
「で、準備出来た?」
 デートに向けて元気いっぱいのサリナ。
「まあ、こんなもんかな。サリナはもう?」
「うん、大丈夫だよ」
「なんだかやけに嬉しそうだね」
「え、そうかなぁ?」
 何やら嬉しそうな彼女の顔を見て、アスカはちょっと不思議な顔をするが、少し観察してその理由に思い付いた。
「ああ、前に買ってあげた服だね。やっと着れる季節かぁ」
「そうそう♪ やっと春物が着れるくらいにあったかくなってきたんだから」
 今日のサリナは、薄い水色を基調としたチェック柄のシャツに、ベージュ色のズボンという、活動的な服装をしている。
 アスカは濃い青色の服ではあるが、概ねサリナと似たような服を選んでいる。
「うーん、ちょっと寒くない?」
「一応上着は持ってきたよ。でも、もう外は晴れてるから、大丈夫だと思うけど」
「ふーん」
 アスカもとりあえず、自分の上着を取出しておく。
「じゃあ、そろそろ行くか?」
 サリナの頭を軽く撫でてから、アスカは云う。
「うん」
「あ、あんまりお金無いから、歩きだぞ」
「分かってるよ。仕方ないよね」
 そう云って、2人は部屋を出た。扉は閉めるが、鍵をかけることはない。どうせ大した物はありはしないのだから。
 サリナはアスカの横に並ぶと、彼の腕を取った。アスカが優しげな笑みを浮かべる。そのまま、2人は腕を組んで歩き出した。

第4話−1第4話−3


FFS目次へ

トップへ